梅に鶯 ~新選組と私に刀~
客間に通され静かに座る


スパッ


「お待たせしました!!!」


だから!待ってねぇよ!!

心の中で悪態をついておく…


「悠真!声を少し落とせ!耳障りだ!」

「容保様が少し待っててくれって!」

「悠真ぁー!!!」

「あの?先ほどの、貴方が振り上げてた物
見せていただけませんか?」


広沢さんを無視して

悠真が芹沢さんの前に座り

鉄扇を見たいと言った

その目は、お強請りする子供そのもの…


「構わんぞ」


芹沢さんがにっこり微笑み

扇を差しだした


それを受け取り、眺める


「芹沢鴨」

「儂の名だ」


悠真は、扇に彫られた文字を手でなぞる

そういえば…

〝尽忠報国を成す者 芹沢鴨〟

たしか、そう書いてあった…


「とても…重い扇ですね…」


悠真は、芹沢さんの方を見て微笑む


「ありがとうございます」


芹沢さんに鉄扇を返すと、今度は


近藤さんの方を向いた


「貴方の刀を見せていただけますか?」


刀をそう簡単に見せる訳ねえだろ!!!


「どうぞ」


あっさりと悠真に刀を差しだした

おいおい…… 近藤さん……

にっこり笑い、近藤さんから刀を受け取る


「悠真ぁ… 子供の玩具ではないぞ!
早く返せよ!!!」


広沢さんが、呆れ顔で言う


悠真は、にこにこしながら立ち上がり


明るい縁側へ


刀を抜くと刃をジロジロ見る


そして、鞘に戻しクルリとこちらを向いた


「ありがとうございます」


近藤さんが刀を受け取ると


「あ!!!」

俺達がビクッとすると、広沢さんが

悠真を睨む

「なんだ!!!悠真!煩いなぁ!!!」

「広沢さん、容保様が書状を書く準備を
してて欲しいと言ってましたよ!」

「はぁっ!?それ早く言ってくれよ!!
俺が仕事遅いと思われるだろ!?」

「早いと思ってませんよ」

「誰のせいだよ!!毎回毎回!!」

「早く準備したらどうです?」

「覚えてろよ!!!」



バタバタと広沢さんが出て行くのを

悠真は、クスクス笑って見ていた







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