梅に鶯 ~新選組と私に刀~
屋敷の近くなると


「ここでいいです」


籠を降り、一人で帰ると言う



「悠真、すぐそこだ」

「だから、歩きたいんです」


「悠真ぁ」



籠を降り、少し先を歩き振り返る


「私…江戸に帰る」


「悠真 今回は、相手が悪かった」


「私は、どんな相手でも嫁ぐと言ったのに
どうして邪魔するの?」


「邪魔って、あれはなぁ!!」


「朝比奈!!」



!!!



悠真が、俺を呼び捨てするときは


命令…



懐から書証をだした


「長崎の奉行所に席があるそうです!
なるべく早く、行きなさい!
私が、江戸に帰る前に!!
見送りは、しませんから!お元気で!」



「悠真!!俺は、お父上から頼まれた
お前が良い相手に、嫁ぐのを見届けたい」



「だから、見せてあげようと思ったのに」


「良い相手でなければ意味がない!!」


「意味なんて、いらない!!
私は、誰に嫁いでも、幸せになんてならない!出家して、ひっそり暮らす!」


「何考えてんだよ…出家なんて」


「わからないでしょうね
朝比奈は、父の事は、わかっても
私の気持ちなんてわからない!
肝心なことは、何も聞いてくれないもの」



土方が悠真の肩を掴もうとするが



パシッ




「土方さん?芹沢さんがどうしてお酒を
飲んで暴れてたのか、わかりましたか?」



「……いや、まだ」



「そうですか
残念です……」



土方を見つめ、悠真が微笑んだ



クルリと方向を戻して、屋敷に戻って行った



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