人魚になんて、なれない
ざぱん。


遠くで水音がした。


誰かが水に飛び込んだかのような音だ。


今日は誰も来ないはずなのに。


水中でそんなことを考えていると、急に体が浮き上がる。


何事かとあわてる暇もなく、強制的に体を引き上げられた。


げほげほとむせていると、降ってくる怒鳴り声。


「なにやってるんだ、死にたいのか!」


少女の体を引き上げたのは、若い男。


「おいっ、聞いてるのか?!」


肩を掴んでがくがくと前後に振る男に、聞いてますよとそれはそれは迷惑そうに答えた。


「聞いてますってば、先生」


水を滴らせながら、二人はしばらく睨み合っていた。
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