LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
「喜ぶ要素が一つもないんですが」
ハッキリ言って、柄の悪い町だ。
表通りのビジネス街は整備が行き届いてキレイだけれど、そのぶん、中心から外れたエリアには後ろ暗い人とモノが集まる。
おかげで、ぼくは退屈しない。
「おねーさん、もしかして暇? 暇だろ? なあ、遊ばねえ?」
ほら、まただ。
崩れた格好をした、体だけ大きな弱虫が、女性に下品な声をかけている。
三人集まって、やっと、ナンパする度胸がつくらしい。
さて、女性を助けるべきか、放っておくべきか。
女性のほうも柄が悪いなら、ぼくが介入する必要もない。
まともな社会人なら、救出するほうがいいだろう。
もしも美人なら?
それはもう積極的に、最高のタイミングで助けに入るべきだ。
なんてね。
そういう期待はいつも胸に抱えているのだけれど、本気にさせてもらえるような女性には、残念ながら巡り会ったことがない。