LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―


わかった。壁の作り方がわかった。
 思念を外に逃がさないための壁。声を聞かれないための術。
 そうか。
 こんなふうにしないと、人は無防備で、何もかも聞かせてしまうのか。思念のすべてを聞かれてしまうのか。
 自制って、できているようで、できていない。思念も感情も欲望も、少し特殊な環境下では簡単に流出する。
「ごめんなさい……」
 誰に何を謝っているのか。朦(もう)朧(ろう)とする意識の中で、ぼくはつぶやいた。
 チカラを使いすぎた。体力が底を突いた。体勢を保っていられずに倒れ込んだら、リアさんに抱き止められた。ゆっくりと床に降ろされる。
【リアさん……柔らかい、あったかい……】
 また少し思念が洩れてしまった。


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