LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
至近距離で予備動作なしの回し蹴り。
食らった相手は、何が起こったかわからなかっただろう。
完全に死角からダメージが入ったはずだ。
半歩踏み込んで、もう一人。
長い脚をムチのようにしなわせて遠心力を稼ぐ。
力を込める必要はない。相手の重心を見極めるだけ。
最適な一点に軽くエネルギーをぶつければ、人間ひとり、簡単に吹っ飛ぶ。
残り一人も片付けようとしたら、必要なかった。
不良の凄まじい悲鳴。
彼女は平然と言ってのけた。
「あらごめんなさい、つまずいちゃって」
直径12mmのピンヒールが不良の足の甲に刺さっている。
スリットの入ったスカートからのぞく攻撃的な美脚。
彼女はヒールに重心を掛けて、さらにぐりぐりと動かした。
あれは痛い。
36π平方mmの面積に、身長1,675mmの女性が体重の過半を掛けたら、踏まれた足の甲の骨は折れるんじゃないだろうか。