LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
さよ子さんが、さも当然そうに鈴蘭さんに笑った。
「天沢さんの背中の翼、かわいいでしょ! あったかくて、羽根はつやつやすべすべなの。羽毛はふかふかだし。それに、一応、飛べるんだよ」
天沢さんは生まれつき、背中に羽毛があったらしい。
思春期、体の成長とともに翼も伸びて、隠せなくなった。
平井家が彼を見出さなかったら、生きる道がなかったという。
天沢さんは穏やかな微笑で、さよ子さんの言葉を訂正した。
「一応ではありません。私はきちんと飛べます」
「引退したのかと思ってた。だって、最近、抱えて飛んでくれないんだもん」
「お嬢さまがお年頃になられたからです」
みんな唖然としている。
ぼくはさすがに慣れた。
これが平井家の日常だ。