LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
「おれは文系。おれのチカラ、言葉に直結してるから、日本語にせよ外国語にせよ、言語系だけは飲み込みがえらく速いんだよね。
一方でさ、努力してないから、数字はほんと苦手」
「じゃあ、今の視界、鬱陶《うっとう》しくてしょうがないでしょう?」
「しんどい。理系の海ちゃんでも、この米粒の数字、疲れんだよね?」
「疲れますね」
「おれ、泣きそうだよ。食べ物がこんなにストレスフルな存在になるとはね~」
さよ子さんが勢いよく立ち上がった。
「理仁先輩、困ってるんですね? ってことは、わたし、ほっとけないです! 目をつぶって、あーんしてください。わたしが食べさせてあげますっ」
朱い目を見張った理仁くんは、ポロッと箸を落とした。
「あ~、気持ちは嬉しいんだけど、そういうのをパパの前でやるのはどーかなーって思うんだよね」