LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―


「ここに来るまで、水に潜ってる感触だったろ?」


「はい」


「右も左も上も下もわからなくて、暗くて息苦しくて、流されそうで」


「流されそう? ぼくは、まっすぐ深い場所まで潜るような感じでしたよ。息苦しさは感じなかったし、スムーズでした」



煥くんは肩をすくめた。



「オレは、洗濯機にでも放り込まれたみたいに、ひどい流れに呑まれてた。真っ暗な激流の中で、海牙の声に引っ張られて、ここに落ちてきた」


「わたしも煥先輩と同じです」


「ビミョ~に悔しいけど、おれも同じく」


「ちょっ、え……ぼくの声?」



思わず喉に手を触れたけど、もちろん違う。


肉声じゃなくて、思念のほうだ。


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