LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
理仁くんは上を指差した。
果てを視認できないほど、天井が高い。
円筒形の部屋。深い井戸の底みたいだ。
「で、ドアがいくつか見えるけど。現実的に言って、くぐれるドアはないっぽい」
壁の上のほうにあるドアは、そこへよじ登るための取っ掛かりがない。
無理なく開けられる高さにあるドアは、ずいぶん小さい。
「持ってくべきアイテムは、たぶんこれ。部屋の真ん中に落ちてた。でも、姉貴の趣味じゃないね。お坊ちゃんが用意したんだと思う」
理仁くんが胸ポケットから出したのは、懐中時計のようなものだ。
本体も鎖もゴールドでできていて、キラキラした石があちこちに埋め込まれ、バラの模様が彫刻されている。
数字も目盛もない文字盤をのぞき込むと、針は一本きりだった。
文字盤は大半がゴールドだけど、十二時から一時の部分は真っ黒だ。