LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―


不意に。


パタン、と音がした。扉が閉まる音だ。


全員、音のほうを向く。



「あ、イヌワシのぬいぐるみ」



リアさんと初めて会ったとき、ゲーセンで取ったぬいぐるみだ。


黒い翼に緑色がかった目、不敵な笑み、チェック柄のタキシード。


リアさんが妙に気に入っていた。ぼくに似ているなんて言っていた。



ぬいぐるみが動いている。


思いがけず広い翼を広げて、ふわりと宙に浮いている。


浮いているだけだ。あの形状では、羽ばたいて飛ぶには物理学的に不可能だから。



イヌワシが翼をクイクイと動かした。


手招きしているように見えた。



【道案内?】



イヌワシがうなずいた。


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