LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―


イヌワシが最初に隠し扉を抜けた。


のぞき込むと、トンネル状になっているらしい。


さほど奥行きはなく、抜け出た先は明るいようだ。



煥くんがイヌワシに続いてトンネルをくぐった。


向こうにたどり着いて、問題ない、と声を寄越す。



鈴蘭さんと理仁くんも向こう側へ行った。


ぼくが最後にトンネルに入る。



四つん這いの姿勢で、すぐ目の前に光が見えている。


その割に、長い。



――海牙くん。



遠くて近いどこかから、声が聞こえる。


ココロへ落ちて潜ってくる途中で聞いた声だ。



【リアさん】



呼び掛けてみる。返事はない。


ただ、ぼくの名前を呼ぶ声だけが聞こえる。



――海牙くん。



ぼくで、いいんですか?


弟である理仁くんじゃなく、ぼくを、呼んでくれるんですか?


ぼくにあなたの声が聞こえるように、あなたにも、ぼくの声が聞こえていますか?


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