LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
「あなたの傷、わたしが治してあげる」
青空が広がっていた。
青草が生える丘の上だ。
一本の大木が枝を広げて、涼やかな影を落としている。
ぼくがトンネルを抜けて丘に立つと、イヌワシは隠し扉を閉ざした。
そこには何の痕跡もなくなった。
イヌワシは理仁くんの肩に止まった。ぼくの肩じゃないのか。
心地よい風が渡っている。
丘のふもとから、女の子と犬が、じゃれ合いながら駆け上がってきた。
水色のワンピース姿の女の子は十歳くらいだろうか。
大型犬は焦げ茶色で毛足が長く、耳が垂れている。
「姉貴だ、あれ」
言われなくても、気付いていた。
短めの髪が活動的で、よく日に焼けている。
屈託のない笑顔がまぶしいくらいの、幼い日のリアさんだ。
木陰に至った彼女は、ぼくたちにチラリと手を振った。