LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
キキは巨大な両手の間でお座りをして、パタパタと尻尾を振った。
右手の人差し指がキキの頭を撫でる。
骨張った関節の形からして、男の手だ。
左手の薬指には、ひどく目立つ金色の指輪がある。
理仁くんが吐き捨てた。
「うちの親父の手だよ」
両手は、キキを包み込むようにして抱え上げた。
焦げ茶色の毛並みがすっぽりと隠れてしまう。
そして、そのまま、両手はキキを握りしめた。
音が鳴った。
骨が砕け、肉がつぶれ、血があふれ出る音。
鈴蘭さんが短い悲鳴を上げた。
理仁くんがこぶしで自分の太ももを打った。
【どうしてこんな……】
呆然とした煥くんの手を、彼女が振り払う。
泣き叫ぶ声は、ぼくたちの耳には聞こえない。
駆け出そうとする彼女を、我に返った煥くんがつかまえる。
巨大な手に、指輪が一つ増えた。
血濡れた指先が満足そうに指輪をなぞる。