LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
鈴蘭さんの頬が涙で濡れている。
「残酷です、こんなの」
ゴウッと音がする。
再び空間が裂けて、指輪だらけの血濡れの両手が引っ込んでいく。
理仁くんは、青すぎる空を仰いだ。
「死んだ動物の名前も顔も性格も思い出も、全部、覚えてるよ。苦しくてさ、おれも姉貴も、だんだん泣けなくなった。
もういっそ自分たちも死のうかって、何度も、何度もさ、カッターナイフ持ってきて、自分の体を傷付けてみたんだよ」
小さな彼女がふらりと歩き出す。
その数歩先の空中に、凶暴そうに輝くものがある。
包丁ほどのサイズがありそうなカッターナイフだ。
【ダメです、リアさん!】
カッターナイフが、あどけない少女の頬を切り裂いた。
血が流れる。