LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
「やめろ!」
煥くんがカッターナイフを打ち落とした。
ジュッと音をたてて、カッターナイフは消滅する。
でも、別の方向から別のカッターナイフが飛んできて、彼女に切り掛かる。
鈴蘭さんが青草に膝を突いて、彼女を抱き寄せた。
「ダメ、やめてってば!」
理仁くんは、うつろな目にカッターナイフを映している。
「姉貴のほうが、おれより傷付いてた。ガキのおれがするより強く、自分を傷付けてた。
これが姉貴の記憶なら、カッター奪うの無理だよ。ほんと怖くなるほど深く切ってたから」
煥くんが顔をしかめた。泣き出しそうな顔に見えた。