LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
幼いリアさんが、か細い泣き声をあげた。
小さな手が鈴蘭さんにしがみ付いた。
カッターナイフはその手を襲う。青い光が傷を癒す。
鈴蘭さんが優しく言った。
「わたしはここに残ります。三人で先に進んでください。わたしのチカラにも限りがあるから、できるだけ早く。
みんなで助かりましょう? だから、行ってください。お願いします」
理仁くんが、ゆっくりうなずいて、ぎこちなく微笑んだ。
「ありがと」
鈴蘭さんは笑顔でうなずき返した。
幼い泣き声は大きくなっていく。
切なくて、聞いていられなかった。
ぼくはリアさんのことを何も知らない。
知ってみたいとか、近付きたいとか、そんな願いをぼくがいだくのは、思い上がりなんだろうか。
彼女のココロの奥へと、また一つ、駒を進める。
彼女が耐えてきた苦しみを、また一つ、ぼくは知ることになる。