LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―


煥くんが理仁くんに訊いた。



「誰が入院してんだ?」


「おふくろ」


「病気か?」


「植物状態ってやつ。問題なく生命活動してるし、目も開いてるし、座らせたり立たせたりもできるんだけど、意識が戻らないんだよね。

病気が原因でも事故の後遺症でもなく、そんなふうになっちゃってさ~。ね、朱獣珠?」



不吉に速いリズムで、朱獣珠が脈打っている。


そこに同期した玄獣珠も、おそらく白獣珠も、身震いをしている。


朱獣珠が訴える。



――いくつもの命を手に掛けた。人の命さえ手に掛けそうになった。


――苦痛。禁忌。罪悪。


――しかし、如何ともできない。



願われて代償を与えられたら、条件を成立させねばならない。


宝珠の宿命にとらわれた朱獣珠が哀れだ。


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