LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
煥くんが遠慮のない口調で言った。
「母親、自殺か?」
理仁くんが肩をすくめた。
「かもね。でも、朱獣珠は命を奪わなかった。こいつ、平和主義者だから、本能的にそれを回避したんだと思うよ。
命を奪わずに済む範囲でしか、願いを叶えなかった。で、おふくろは、五十歳の眠り姫ってわけ」
【絶望? 強迫観念? 刷り込み?】
「たぶん、全部だね。あんなのが旦那だったら絶望するし、次の代償を探さなきゃって強迫観念もあっただろうし、生活に困ったら何かを代償にって刷り込まれてただろうし」
理仁くんの母親は怯《おび》えていたんだろうか。
ペットの次に夫に殺されるのは自分だ、と。
それとも、望んでいたんだろうか。
どんな形でもいいから早く夫から解放されたい、と。