LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
「理仁の母親は、理仁やリアさんを連れて逃げようとはしなかったのか?」
ぼくもそれを思った。
でも、できなかったんだろうという想像もつく。
一般的な家庭内暴力であっても、配偶者から逃げ出せる被害者は少ない。
理仁くんが肩をすくめた。
「平井のおっちゃんが言ってたんだけどさ。運命は、可能性の枝をたくさん持つ樹みたいなもんだ。
でも、枝分かれのポイントは限定されてる。どうあがいても変わらない部分もある。
親父が腐ってんのは、変わらない部分。おふくろが弱いのもそう。宿命って呼ぶんだって」