LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―


「理仁の母親は、理仁やリアさんを連れて逃げようとはしなかったのか?」



ぼくもそれを思った。


でも、できなかったんだろうという想像もつく。


一般的な家庭内暴力であっても、配偶者から逃げ出せる被害者は少ない。



理仁くんが肩をすくめた。



「平井のおっちゃんが言ってたんだけどさ。運命は、可能性の枝をたくさん持つ樹みたいなもんだ。

でも、枝分かれのポイントは限定されてる。どうあがいても変わらない部分もある。

親父が腐ってんのは、変わらない部分。おふくろが弱いのもそう。宿命って呼ぶんだって」


< 275 / 415 >

この作品をシェア

pagetop