LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
「彼氏なんて紹介してもらったことはないね~。恋バナも聞いたことないし、噂も知らない。フツーに考えて、過去にはいたんじゃないかと思うけど。
で、何で急に? 彼氏いますかって、海ちゃんが訊くならともかく」
【一言、余計です】
煥くんはかすかに笑って、すぐに真剣な目をした。
「さっき、リアさんは兄貴に似てると思った。兄貴の彼女にも似てると思った。でも、オレにも似てるとこがある気がする。
オレと同じで、自分の見せ方がわからねぇんじゃないかって。だから、リアさん自身、この廊下で迷っちまってんじゃないかって」
角を曲がったら、リアさんが立ち止まっていた。
そこは行き止まりだった。
突き当たりの壁に、大きな油絵が掛けられている。
白とグレーの濃淡で表された花束の絵だ。