LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
ぼくたちも立ち止まった。
しなやかに澄んでまっすぐな声で、煥くんは淡々と語った。
「オレには歌があって、バンドがある。オレが詞を書くんだ。言葉、あんまり知らなくてさ、書くたびに怖いんだぜ。兄貴たちが受け入れてくれなかったら、って。
でも、いつも大丈夫なんだ。オレは歌うことで、自分を見せられる。それが許されてる。奇跡みたいだ」
おそらく多くの人が、煥くんと同じだ。
自分を見せることに戸惑う。
自分を見せていい範囲を測れずにいる。
あるいは、自分を見せる方法を知らない。
近付くにつれて、リアさんの表情がハッキリわかってきた。
怒っている。高ぶる感情のあまり、涙を流している。