LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
「これ、おれからのお願い」
ぼくの背後で隠し扉が閉まった。
目の前に、ぼくと理仁《りひと》くんとイヌワシがいる。
鏡だ。
一枚だけじゃなく、何枚も、何枚も、数え切れないくらいの鏡がある。
視線を感じて見上げると、低い天井も鏡だった。
「ミラーハウスですか?」
部屋と呼ぶには狭すぎる空間。廊下と呼ぶには短すぎる奥行き。
突き当たりまで進んで角を折れると、また鏡だ。
すべての選択肢が行き止まりに見えた。
「右斜め前方、通れるよ」
理仁くんが指差して、先に立って歩く。
そうか、ぼくの能力を使えば、光の反射を利用した錯視は簡単に見破れる。
「お株を奪われた気分です」
「さっき、おれの声を使いこなしてた海ちゃんが言う?」