LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
「何ですか?」
「いや……聞いてほしい。それで、否定してほしい」
「否定?」
理仁くんの手がイヌワシをつかまえた。
イヌワシが迷惑そうな顔をする。
理仁くんは気に留めず、すがるようにイヌワシを胸に抱えた。
「海ちゃんはさ、物心ついたころにはもう、玄獣珠を預かってたろ? 物理的な意味で、だよ。肌身離さず、玄獣珠、持ってたろ?」
「はい」
おれは違う、と理仁くんはつぶやいた。
「親父が使う朱い珠の正体、知らなかった。怖いと思ってた。正体知ってからも、怖かったし、触れたくもなかった。
身に付けるようになったのは、一年ちょい前だよ。フランスに逃げる直前。姉貴が親父のとこから盗み出して、それから」