LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
理仁くんは前を向いて歩いている。
ぼくに顔を見せたくないんだろう。
でも、まわりじゅうにある鏡が、理仁くんを映してしまう。
笑みを消した無表情は、涙より怒りに近いように見えた。
「おれかもしれねぇんだよ。黄帝珠が目を覚ました理由。
だって、おれ、親父のこと怨《うら》んでる。物事を実現するチカラがあるおれの声で、何度も言った。親父を怨んでる、って。
黄帝珠って、怨みの宝珠だろ? あいつ、マジでおれに感応したんじゃねぇの?」
【違う!】
考えるより先に、ぼくは否定した。
直感的に、本能的に、それは違うと思った。
「きみの声が怨みのチカラを発現した? そんなはずないでしょう!」