LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
「あの仕掛けは、一体?」
「赤外線センサーに反応して、矢が発射される仕組みだね」
「物騒な。だから、イヌワシは変な軌道で飛んだんですか」
「うん。赤外線、避けて飛んでた」
理仁くんは、何もない空間に目を凝らした。
力学《フィジックス》の視界には、赤外線が識別できる。
今のぼくには見えない。
ただ、赤外線を飛ばす装置が壁のあちこちに埋め込まれているのはわかる。
「家出したとき、でしたっけ? 赤外線を見ながら防犯カメラを無効化したのは?」
「ああ。ここには、その記憶が投影されてるかもね。壁の色、親父の屋敷に似てるし。
家出しようって本気の計画を立て始めた当初、おれはビビってた。でも、姉貴はおれの先に立って、華麗にやってのけたんだ。防犯装置をぶっ壊すのも、朱獣珠を盗むのも」