LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
ぼくは軽く肩を回して、股関節のストレッチをした。
膝と足首の関節を振って、無駄な力を抜く。
「海ちゃん、体、すげぇ柔らかいね」
「柔らかくないと、理想値どおりに動かないんです。ケガも増えるしね」
気楽に笑ってみせて、赤外線センサーのエリアに足を踏み入れた。
頭上には、矢。
左右の壁の装置が光を照射しているのがわかるのに、見えない。
情報不足への不安はある。
それを補うのは、理仁くんへの信頼だ。
「基本、左右の壁から壁に糸が張ってある感じ。高低差はあっても、奥行き方面に斜めってるのは少ない。
まず、50センチ前方に一本、高さ約120センチのがある。それくぐったら、25センチ先に、高さ40センチ」
慎重に、250mmずつ進む歩幅。
不可視光の直線をくぐり、またぎ、跳び越す。