LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―


たった二十五メートルが長かった。


凄まじい量の汗をかいて、ぼくは扉の前に至る。


理仁くんが、大きな音をたてて手を叩いた。



「お疲れ~! 完璧だったじゃん!」


「リヒちゃんのおかげですよ! 早く、きみもこっちへ!」



理仁くんが両腕を広げて、肩をすくめた。


力の抜けた笑い方をしている。



「おれは無理だよ。見えても、海ちゃんみたいに動けねえ。この先は海ちゃんひとりで行ってよ。いや、ワッシーがいるか。どっちにしても、姉貴によろしく」



緊張していた両膝が、カクンと折れてしまった。



「来ないんですか?」


「行けないってば。運動能力的にも厳しいし、それ以上にさ、海ちゃんには姉貴の声が聞こえないんだよね?」


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