LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
黙っていた彼女が口を開いた。
「視覚的に優位な能力、でしょ? 海牙くんの目、他人よりたくさん見えてる。違うかしら?」
朱みがかった瞳が、射抜くようにぼくを見つめた。
何をどう観察して、その結論に至ったんだろう?
尻尾を出すほどのことはしていないはずなのに。
「おおむね正解です。ぼくのチカラは『力学《フィジックス》』。視界に映る情報が、数値化して立ち現れます。ぼく自身がその計算方法を知っている数値のみ、ですが」
それ以外の、計算式が未知のものは、うじゃうじゃとうごめく多足の虫みたいだ。
何らかの文字に見えるけれど、読めそうで読めない。
処理できない情報が視界にあることは不快で、しかもそれらは意外と身近にあふれている。
気にし始めると、ストレスがたまる一方だ。
理仁くんは目を丸くして首をかしげた。
「情報が数値化って、んじゃ、おれの身長とか?」
「1,821mm、計測に誤差があるとして±3mm、ですね」