LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
祥之助のそばにその直方体があることには、最初から気付いていた。
その正体が何なのか、近付いてみて初めてわかった。
まるで棺《ひつぎ》だった。
「リアさん……」
直方体の中で、黒衣のリアさんが仰向けに横たわって目を閉じている。
胸の上で両手の指が組み合わされた姿勢だ。じっと見つめる。
呼吸をしている様子がうかがえない。
ぼくはとっさに、リアさんに触れようとした。無駄だった。
透明度のきわめて高い素材から成る蓋が、直方体にぴったりとかぶせられている。
ざらざらと不快な声が哄笑した。
【ココロの核は、おおむね堅く閉ざされておる。このココロの主は殊《こと》に守りが堅い。
おぬしらを最奥部へ近付けぬ迷宮も、ひどく入り組んでおったのう。しかも、侵入者を惑わす仕掛けだらけだった】