LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
テンポよく交わされる軽口に、ぼくは少し笑った。
ぼくは一人っ子だ。
仲のいいきょうだいと町に出掛けるなんて、想像もつかない。
姉弟は急ぎの用事があるらしい。
面会時間と聞こえた。時計を気にしながら、足早に立ち去っていった。
と思ったら、彼女が駆け戻ってきた。
「記念に一つあげるわ。今日はありがとう。じゃあね」
笑顔で押し付けていったのは、イヌワシのぬいぐるみだ。
手ざわりはいいけれど、やっぱり、別にかわいくない。ぼくに似てもいない。
「あれ?」
イヌワシが身に付けたチェック柄のタキシードの懐《ふところ》に、紙が挟まれている。
紙を広げると、彼女の名前と連絡先だった。
「リアさん、か」
予想もしなかった展開だ。胸が騒いだ。
連絡してみようと思った。