LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
ぼくは体側を向けて待つ。
身構えるのではなく、力を抜いた。
【柔よく剛を制す、というんですよ】
喉を裂こうとする爪が皮膚に触れる寸前、背中を反らせて床に手を突く。
床を蹴った脚に回転の反動を乗せる。
ぼくの上に不格好に浮かぶ黄帝珠へ、脚を跳ね上げる。
「くたばれ!」
蹴り飛ばした。
完璧に急所《タマ》に食らわせた。
祥之助の体が吹っ飛んでいった。
【何だ、この痛みは!】
「後で徹底的に対処してあげますから、今はそこでおとなしく悶絶しててください」
【くっ……祥之助の体が動かんっ】
品のない呻き声が、あまりにも聞き苦しい。ぼくは命じる。
【黙れ】
祥之助の体で這いつくばった黄帝珠が、号令《コマンド》を受けて沈黙する。
疲労感がのしかかってきた。
めまいがして、膝に腕を突きながら目を閉じる。
ぼくから黄帝珠へと伸びるチカラの残像が、まぶたの裏にハッキリと見えた。