LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
海牙くんは臆病だった。
そのくせ背伸びをしたがった。
わたしには、それがいとしくてたまらなかった。
冬スタイルのカットモデルになってもらって、遅くなった夜。
二人きりのサロンで、こっそり唇を重ねた。大人のキスもした。
「少しだけ……さわっても、いいですか?」
震えがちの言葉に、わたしもドキドキした。
いいわよ、と短く答えて、待った。
カットソーの内側に入ってきた手は大きくて熱かった。
じれったい時間を大事にしたかった。
でも、期待を胸の奥に押し込めておくことは、だんだん難しくなっていった。
自分の心も誰も目もごまかせないくらい、わたしは、恋をしていた。