LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
〈海牙くん、カットモデルやらない?〉
〈夕方に「髪を切れ」と言われたばかりです〉
〈賛成。わたしが切ってあげる〉
〈本当ですか?〉
〈本当です。きみの髪、天然パーマ?〉
〈天然パーマです。見えないでしょう?〉
〈見えない。ちょっと形を変えるだけで、すごく垢抜けるはずよ。そういうの、自分で研究するのは面倒くさいって思ってるでしょ。素材そのままで十分カッコいいからって〉
〈読心術ですか? 全部バレてる〉
〈きみみたいな人のために、わたしみたいなプロがいるの。髪も服も、自分で決めるのが面倒だと思うなら、全部相談して〉
画面を見ながら一人で笑っている自分に、ふと気付いた。
今日初めて会った人と、画面越しに、文字だけの会話をしている。
その他愛ないやり取りが、心地いい。
〈じゃあ今度、髪のカット、よろしくお願いします〉
〈ついでに写真も撮らせてもらっていい?〉
〈撮ってどうするんですか?〉
〈サロンに飾って客引きするの〉