LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
「怨む? 何のことです?」
総統の屋敷は、県境の山手のほうにある。
市街地までは案外遠い。一本道だから迷う心配はないけれど。
ぼくは毎朝、ローラースケートで屋敷を出る。
行きは下り坂。バイク並みのスピードが出るから、目を保護するためのバイザーを掛けている。
駅のそばに出たら、革靴に履き替える。
ローラースケートはスポーツバッグの中。駅前で友人と落ち合って学校に向かうのが日課だ。
「はよ、海牙」
「おはよう」
升井瑠偉《ますい・るい》。小柄で童顔なのを気にする同級生。
ぼくと並んで歩くとさらに小さく見える、と愚痴を言う。
そのくせ毎朝、瑠偉はこうしてぼくを待っている。
「おまえ、昨日、また集会を抜け出したよな。担任がキレてたぞ」
「そろそろ学習してくれればいいのに。ぼくはこういう人間なんですが」
「だよな。海牙を枠に嵌《は》めようってのが間違いだ」