LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
「なあ、海牙、確かめたいことがあるんだ。玄獣珠が反応するかどうかを見たい。気になる人物がいてさ」
「その人物に会いに行って反応を見るってことですか? 誰なんです、それ?」
「二年の文天堂祥之助《ぶんてんどう・しょうのすけ》。大富豪の御曹司で天才児って、校内でも有名人だ。知ってるか?」
「知りません」
「クラスメイトの顔も名前も覚えない男だったな、おまえ」
「興味のない男の顔と名前なんて、覚えるだけ無駄でしょう?」
「女なら全員覚えるのか?」
「興味のない女、以下略」
瑠偉の話によると、文天堂祥之助は、文系では全国トップレベルの成績らしい。
学年が違う上に文理が違うから、まったく知らなかった。
さらに、文天堂家は県内でも有数の資産家だという。
市内には文天堂グループ傘下のファッションビルがある。
本屋が入っていない複合ビルなんて、ぼくは行く機会もないけれど、デートスポットとしてその名前を見聞きしたことくらいはある。