LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
二年生の教室まで文天堂祥之助に会いに行く必要はなかった。
ぼくと瑠偉が正門の前に至ったときだ。
正門前には、生徒の送り迎えを想定した自動車用のロータリーがある。
そこにドイツ製の黒い高級車が停まった。
ボディガードが先に車を降りた。
後部座席のドアを開けて敬礼する。
「行ってらっしゃいませ、祥之助さま」
抜群のタイミングで姿を現した彼が、文天堂祥之助らしい。
背丈は1,750mmほど。二年生としては、やや高い部類に入る。
瑠偉が肩をすくめた。
「あれが噂の文天堂祥之助だ。天から二物を与えられたって評判の、なかなか華やかな顔してるだろ」
「天から二物程度なら、全然珍しくもないんですが。ぼくはもっと持ってますし」
「人前でそういうこと言うの、ほどほどにしとけよ」