LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
ぼくは祥之助に背を向けて、歩き出した。
瑠偉が隣に並んだ。
祥之助が何かをわめく。声が裏返る。
あのざらざらした低い声ではない。
さっきのは何だったのか。
足音が走り寄ってきた。
攻撃的な手がこちらへと伸ばされる気配。
ぼくは振り返りざま、ローラースケートが入ったスポーツバッグを叩き付けた。
「すみませんね、手加減できなくて。背後に立たれるの、苦手なんですよ」
祥之助のボディガードが右手を抱えて呻いた。
祥之助は、ボディガードには目もくれず、ぼくに指を突き付けた。
【玄獣珠の預かり手よ、汝に話がある】
ざらざらした低い声。
音ではない、意識に直接突き込まれる思念の声。
ぼくの顔色が変わったせいだろう、祥之助がニヤリとした。
「放課後、午後七時に正門前で待っていろ。怖がらなくていい。話し合いだ。食事くらい出してやる」