LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
瑠偉がぼくを見た。
喉が干上がる感触がある。
玄獣珠のことを知られている。
不気味で不快だ。
祥之助も宝珠の預かり手なのか?
でも、四獣珠ではない。だったら、何者?
ぼくは口元に薄い笑みをこしらえた。
あせりも不快も、悟られたくはない。
「お断りします」
「何だと?」
「放課後には先約がありますので」
祥之助が鼻にしわを寄せて、にらみながら笑うような、鼻の上から見下す表情をした。
「おまえを招いているのは、ボクではない。彼はボクのように温厚ではないよ? 怖い目に遭いたいのか?」
「いえ、どう考えても、先約をスルーするほうが怖い目に遭うんですよね」
今日の十九時は、玉宮駅前のストリートライヴだ。
さよ子さんとの約束をすっぽかしたら、怖いというか、ひたすら面倒くさい目に遭う。
祥之助について何もわからない状態で、一人で誘いに乗るのは愚策だ。
総統に話すほうがいい。
朱獣珠の理仁《りひと》くんにも連絡を取りたい。
ぼくが再び背を向けると、今度は、祥之助は追ってこなかった。