LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
ぼくは笑顔を作った。
「阿里海牙といいます。玄獣珠の預かり手です」
「青龍の安豊寺鈴蘭《あんぽうじ・すずらん》です。あの、瑪都流のライヴは、事情がわかっていて来られたんですか?」
「事情?」
「あ、ご存じないんだ。すぐわかると思いますけど、瑪都流のヴォーカルの……」
会話はそこまでだった。
瑪都流のスタンバイが完了したらしい。
簡潔なMCが入って、ギターとベースが短いフレーズで掛け合いをして、ヴォーカリストがフロントマイクの前に立つ。
その途端、止める隙もない猛烈な勢いで、さよ子さんと鈴蘭さんが駆け出した。
「ライヴ始まるーっ! 煥《あきら》センパーイ!」
「寧々《ねね》ちゃん、場所取りありがとーっ!」
重要な情報を話そうとしていたんじゃないのか?
四獣珠の問題よりも、インディーズの高校生バンドのほうが重要?