LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
演奏が始まってすぐ、さよ子さんの発言の意味がわかった。
瑪都流の編成は、ヴォーカル、ギター兼コーラス、ベース、キーボード、ドラム代わりのPCだ。
スピーカーはそれぞれ一台ずつ、計五台を使っている。
だから、場所によって音量のバランスが違う。
ヴォーカルの入らないイントロが奏でられる。
RPGのオープニングで冒険の始まりを告げるファンファーレのような、聴き手の期待を掻き立てる曲調。
うまいな、と思った。
ぼくは楽器をしたことがないから、音楽理論的にどうだということはわからない。
ただ、体の芯にスッとなじむ音だと感じた。
イントロが唐突に終わる。
長身で栗色の髪のギタリストが、ヴォーカリストと視線を交わした。