LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
一時間半のライヴは、あっという間だった。
ぼくはほとんどずっと目を閉じたまま、心地よい音楽の中にいた。
だから、隣に立たれていたことに、しばらく気付かなかった。
ライヴ終了のMCが聞こえて目を開けて、右の頬に視線を感じて、ハッとした。
「リアさん!」
「こんばんは」
「聴きに来られてたんですか」
「弟の友達なのよ、彼ら」
彼らというのは、もちろん瑪都流のことだ。
理仁《りひと》くんは少し離れた場所で、ナンパでもしているのか、女の子たちと話している。
「ぼくも人に誘われて聴きに来たんですけど」
「さっきまですぐ近くにいたショートボブの子でしょ? きみの彼女?」
「違います。全然違います。お世話になっているかたのお嬢さんで、ぼくは護衛を頼まれただけです」
「ふぅん。ねえ、ちょっと横向いて。さっきみたいに」
「こうですか?」