LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―
突然、リアさんの手がぼくの頬に伸びてきた。
反射的にビクッとしてしまうのを、うっかり制御しそびれた。
リアさんの指先は少し冷えている。
その指が、ぼくの髪をそっと持ち上げた。
「前髪の形、どうするのがいいかしら? 長めでもいいと思うけど、今はちょっと長すぎ。
それにしても、横顔、ほんとにキレイね。まつげがまっすぐで長くて、うらやましい。天然つけまつげだわ」
「最後の一言、矛盾してません?」
「肌もキレイ。お手入れも何もしてないんでしょ? ずるいなあ」
かすかな夜風が吹いた。
肌寒い空気に、ふわりとしたいい香りが混じっていて、ぼくは思わず息を止めた。
たぶん、リアさんの髪の匂い。
それとも、肌にひそませた香水の匂いだろうか。