LOGICAL PURENESS―秀才は初恋を理論する―


瑪都流は楽器を片付けながら、気さくな様子で聴衆と話をしている。


唯一、ヴォーカリストの煥くんだけは、さっさと輪を離れた。


が、クールな一匹狼に、果敢に声をかける勢い余った姫君が二人。


逃げ腰になる煥くんには同情を禁じ得ない。



栗色の髪のギタリストは作曲とコーラスもこなして、MC担当のバンドマスターでもある。


理仁くんが彼に話しかけると、まわりは女の子でいっぱいになった。



リアさんが紹介してくれた。



「理仁と話してるのが、伊呂波文徳《ふみのり》くん。ヴォーカルの煥くんのおにいさんで、理仁が気を許してるたった一人の相手ね」



気を許せる友達。ぼくにとっての瑠偉みたいなものか。


人の輪の中心に立って、理仁くんは楽しそうに笑ったりしゃべったりしている。


ぼくに向けていた社交的な笑顔よりずっとリラックスしているように見えるのは、リアさんから文徳くんの紹介を受けたせいだろうか。


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