キミに…Kiss
そう言って、翔が美華の白い手を握り俺に見せたモノは
左手の薬指に光る…小さな透明の石がついた指輪だった。
「俺たち、いろいろあったけど、予定通り大学を卒業したら籍を入れるから」
名前もわからない石の輝きと、翔が笑った顔が誇らしげで
俺にはどんなに大きくて高価なダイヤモンドよりも輝いて見えた。
「……帰るわ」
もうこれ以上、2人を見ていられなかった。
「おい 陸!お前、美華に用があったんじゃねぇのかよ?」
「なんもねぇよ」
歩き出そうとした俺に声をかけたのは兄貴で、アイツは黙ったままで。
右手で左手の甲を隠すように包んで俯いていた。
今、自分の薬指に輝いている幸せを守りたい。
それが美華の出した答えだと思った。