キミに…Kiss

でも俺がなにも言わなくても、愛理の父親はなにかを勘づいたみたいだった。


「愛理に別れを告げた…理由はこれなんだな?」


「…………」


「愛理の母親から2人が別れたことを聞いたんだ」


それから膝の上で両手を組み、どこか遠くを見るような目をして


いきなり父親が俺にこんな話をはじめた。


「君が愛理に別れを告げた理由が同じなら…俺にも君と同じような経験がある」


「……え」


「俺も愛理の母親のことを想って一方的に別れを告げて別れようとした。だけど…結果はいっぱい泣かせて…ただ悲しませただけでさ」


俺は愛理の父親に自分を重ねながら…その話を黙って聞いた。
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