キミに…Kiss
「その時に思ったよ。相手のことを想って別れるなんて…間違ってるって」
「…………」
「君の本心を聞かせてくれないか?今のままじゃ、愛理だけじゃなくて…。君だって辛いだろ?」
その言葉を聞いて、胸がなにかに押しつぶされそうだった。
あの日、愛理とデートをして帰った後。
親父から思いも寄らないことを突然 聞かれた俺は愛理に別れを告げることを決めた。
でも、そんなの…もちろん俺の意思じゃない。
ホントに自分ではどうしようもなくて。
それを誰にも言えなくて苦しかった──・・・
「なにか隠してることがあるなら話してくれないか?愛理の父親として聞いてるんじゃない。同じ経験をした男として聞いてると思ってくれ…」
それから、俺はしばらくして俯いていた顔をあげた。
「俺、ホントは愛理と別れたくなんかねぇ…」