キミに…Kiss

と言うことは、あたしが目にしたモノは まぎれもない現実ってことで。



見なかったら…よかったのにな。


そしたら きっと…こんなに胸も痛くならないで済んだのに。


そんなことを思いながら、いつもだったらご飯をおかわりする夕食もほとんど残しちゃった。





夕食後。ザ──ッ…


蛇口から勢いよく流れる水の音。


その音を聞きながら思った。


あたしが見たモノを今すぐ洗い流して欲しいって。


でも、流れて消えて 忘れられるはずもなく……。



「急にビックリするじゃない!?」


「ママ、夕食残しちゃってゴメンね。ちょっとだけ背中貸してくれる?」



今、パワー激減中のあたし。


夕食を終え、お皿を洗っているママの小さな背中に抱きついた。



「なんかあったの?」


「ママ、どうしよう。すごく…苦しい…よ」
< 61 / 321 >

この作品をシェア

pagetop