Four you ~2+2=4=2×2~
「…というわけで、今日からお世話をさせていただきます、ホログラム家政婦『HR―8808』です」

翌日の夜。枡鳥家が全員揃ったところで、家政婦が深々と頭を下げる。

「昨日はすみませんね、家政婦さん。うちの息子が…」
「いえいえ、そんなものだろうと思ってましたから」

耀兵は膨れっ面をしながら二人に抗議する。

「そりゃそうなるだろ? …まあ、別にいいんだけどさ。来ても、来なくても。家政婦さん、多分仕事は少ないと思うよ。家事は今まで十分にやってこれたから」

得意気に家政婦の立っていた方を見るが、そこに家政婦はいない。

「…あれ?」

辺りを見回す。すると間もなくして、家政婦が大量の衣服を抱えて戻ってくる。

「洗濯物、置きっぱなしになってましたよ? 畳んでおきました」
「…今の間に?」
「ええ。仕事が早いのが売りなので」

耀兵が呆気にとられていると、家政婦が尋ねる。

「…あれ? 娘さんは?」
「娘さん? …ああ、陽未のことですか。いつの間に部屋に行ったんだ…? 陽未、降りて来なさい」

慎太が声を掛けるが、陽未は現れない。

「全く…」
「すみません、私も夫も、甘やかして育てたものですから…」

家政婦が陽未の部屋に向かう。慎太も理帆と耀兵を残し、家政婦の後を追う。

「出てきてくれないの?」

家政婦が、ドアの向こうにいる陽未に声を掛ける。何度もそうしてみるが、陽未はスマホをいじったまま、一向にドアの外に出ようとしない。

「すみません…部屋に引きこもってばかりで…まあ、大方スマホでもいじってるんだと思いますよ」

慎太が家政婦に謝罪する。

「謝ることないですよ」

家政婦はそんな慎太に笑顔を見せる。

「私はホログラム。人間じゃないですし、そもそも実体なんてありませんが…この子が心を開いてくれないからこそ、こちらもファイトがわいてくるんですよ」
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