Four you ~2+2=4=2×2~
「陽未さんの気持ちはよく分かります。私が来る前までも、何の不自由もない日常生活をちゃんと送って行けていた。それなのに私が来て、邪魔だって思われたんですよね? そしてそれを、誰にも言えずに抱え込んでしまった。だけど耐えられなくなって、今そこにいる…」

笑顔からこぼれるため息と、泣き顔からこぼれるため息は音が違うと聞くが、この場で聞こえたのは間違いなく、笑顔のそれだった。

「…正直、陽未さんはすごいです。だって、行動に起こせたんですよ? ということは、それだけの実行力があるということです。世間には、悩みを抱えていても、何の行動も起こせなくて、それで自分を押し殺してしまう、そんな人が大勢います。…でも、陽未さんは違う。例えこんな形になってしまっても、自分の意見をちゃんと主張できた、そういうことじゃないですか」
「…」

涙が一粒流れ、それが頬に筋を描き、続いてもう一粒、同じように筋を描く。それを繰り返していくうちに、陽未の…いや、私の顔はめちゃくちゃになっていた。

これはきっと、陽未に対してのセリフだけじゃない。私に対してのセリフでもあるのだ。家政婦…耶色先輩はまるで、私がこれまで悩んできたことを、私以上に理解しているように見えた。尾張先生あたりから聞いたのかもしれない。そうだとしても、理解は理解だ。そしてこんな素敵な形でアドバイスを言ってくれるなんて、何度感謝しても感謝しきれないくらいだ。

「…さぁ、帰ってきて下さい。陽未さんの気持ちは十分、伝わったと思います。私も陽未さんの気持ちを、私なりにくみ取っていくつもりなので…一緒にいても、いいですか?」
「…はいっ…!」

その言葉が涙ながらに、だけど自然に出たのも、演技じゃない、素の私だった。
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